マダニは、見たことないという方も多いと思います。
当院周辺では、あまり見かけることはないですが、都会の公園でもいる場合があります。
マダニは、基本的に草むらにいます。
公園、河原、山、キャンプ場やレジャー施設の草むらなどにみられます。
ワンちゃんには、草むらの中で匂いを嗅いだり走り回ったりするのが好きな子が多いですよね。そして、ワンちゃんと一緒にアウトドア、楽しいですよね。
こういうワンちゃんの好きな場所は、マダニの好む環境でもあります。
ぜひ予防をしてあげてください。
また、人の場合は、肌の露出の少ない服装がおすすめです。
吸血前のマダニは小さく、1〜4mmほどで見つけられることが少ないかもしれませんが、成虫が吸血すると体がパンパンにふくらみ、約1センチのあずきのような見た目になります。はじめてみる方は、ブルーベリーなどの木の実と間違われる方もいます。
マダニは脚が8本あり、昆虫ではなく、クモに近い仲間の虫です。
様々な動物に乗り移り、吸血しますが、身近では犬でよく見られます。人も吸血されます。
卵から幼ダニ→若ダニ→成ダニと、全てのダニが吸血しては落下して脱皮して、また動物に乗り移り、というサイクルで成長していきます。
成ダニは1〜2週間かけて吸血し、メスは落下した後、2〜3週間で2000〜3000個の卵を産み、その生涯を終えます。
もし、自分やワンちゃんにかみついているマダニを見つけても、引っぱってとらないでください!
すぐに取りたい気持ちはよくわかりますが、無理に引っ張ると、マダニの口の部分だけ残ってしまうことがあるのです。
マダニは吸血するために、口下片とよばれるギザギザ状の針のようなものを皮膚に突き刺して吸血します。さらに、唾液とともに分泌されるセメント様の物質でさらに固定されるため、1〜2週間もの間、動物が動いたりしても落ちることなく、口を突き刺したまま吸血し続けることができるのです。
そのため、簡単に手でひっぱって取ることはできません。
もし見つけたら、ワンちゃんなら動物病院へ、人の場合は皮膚科などで診察を受け、取ってもらいましょう。
マダニが寄生すると、血を吸われ、貧血などを引き起こすだけでなく、人やワンちゃんが病気になることもあります。
○バベシア症
バベシア原虫という病原体に感染して起こる病気で、犬だけでなく人も感染することがあります。
犬:発熱、貧血、黄疸、元気消失。症状が重い場合は急死することもあります。
人:発熱、貧血など
○日本紅斑熱
リケッチアによって起こる病気です。
犬:無症状
人:頭痛、発熱、倦怠感など
○ライム病
細菌により起こる病気です。
犬:発熱、食欲不振、関節炎など
人:遊走性紅斑、発熱、関節痛など。さらに、心筋炎や顔面神経麻痺など様々な症状がでる場合があります。
○重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
2011年に発表されたSFTSウィルスによる病気で、人がマダニに咬まれることで感染します。
日本では、2020年3月29日現在までに507例の報告があります(うち70例が死亡)。
症状は、発熱、消化器症状(食欲不振、嘔吐、下痢など)があり、頭痛、神経症状、皮下出血などがでてくることもあります。
今のところ、治療法やワクチンなどはありません。
当初、人だけの病気と考えられていましたが、2017年に猫、犬、チーターの発症例がでてきて、致命率も今のところ猫で60%、犬で29%と高く、また、動物から飼い主や獣医療関係者に感染することがあり、予防や治療法の開発が待たれる状況です。
マダニは吸血されるだけでは、痒みも痛みもありませんが、このようにマダニを介して多くの病気に感染する危険がありますので、ぜひ予防をして、人も動物もできるだけ安心して暮らせるようにしましょう!